幸せだよと嘘をつく
「半年前から私を抱かなくなったのはなぜ?」
聞きたくない。けれど、訊かなくてはならないと思い質問した。
「……そうだな……無茶ができない。雪乃は、上品で、綺麗だ。愛しているし、俺にとっては飾っておきたいような妻だった」
「汚したくないということなのかしら」
「まぁ、そんな感じだったのかな。だから他の女性を性のはけ口にしていた。酷い男だよな」
汚したくないからと、前島さんも同じようなことを言っていた。
だから康介は他でうっぷんを晴らした。
雪乃は結婚してから夫を拒否した事はなかった。
だから、汚したくないというのは彼の気持ちで、私の思いではない。
求められたのはもう随分前だけど、それまでちゃんと性生活はあったのだから、康介の自分勝手な言い訳でしかない。
「私に魅力がなかったのかもしれない。あなた好みにできなかった。相性もあるのかもしれないわね」
体の相性という物があるのなら、雪乃の体は康介とは合わなかったのかもしれない。
雪乃はあまり経験がなかったし、男性を喜ばせる技術も持っていなかった。
面白みに欠ける妻だったのは否めないけど。
「やめてくれないか……」
「え?」
「彼との関係を、終わらせてくれないだろうか……」
自らが望んで契約を交わした康介が、言ってはいけない言葉だ。
「無理よ。あなたが離婚届にサインしない限り契約は続く」
「……わかった。後……3ヶ月」
こんな生活をいつまで続けるつもりだろう。
苦しそうな夫をみるのはつらい。