幸せだよと嘘をつく




「真奈美さんはそれで納得したんだ」

「ああ。俺は妻とは離婚しない。真奈美に気持ちはないと理解してくれた」

「子供さんが気の毒だわね。あなたも子供さんには会った事があるでしょう」

「子供たちは俺の子じゃない。育てる義務はない」

子供に罪はない。それは当然だ。
けれど康介がここまではっきりと真奈美さんの子供の事を拒否するのに違和感がある。

康介はいったい何を考え、彼の真意は何処にあるんだろう。



「雪乃、契約を交わした日から計算して、君の浮気は後1ヶ月で終わる」

「そうね」

「契約通り、ちゃんと彼との関係を清算してくれ」

康介は前島さんの事を言っているのだ。
もう、そんなものはとっくの昔になくなっているのに。


「大丈夫よ。約束だから、きちんと終わらせるわ」

「ああ……また、昔のように幸せな夫婦関係に戻ろう」

愛し合う夫婦ではない。
幸せな夫婦。




けれどあなたは『幸せだよ』と嘘をつく。




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