幸せだよと嘘をつく
10


約束の半年になる。

離婚はしないというあの契約書の期限だった。

康介はよく耐えたと思う。

彼はただの遊びの関係が、ここまで深い爪痕を残すなんて思ってなかっただろう。


そして約半年かけて、康介は真奈美さんとの不倫関係を清算した。
彼は全てが終わったと思っている。



「康介さん。今日はディナーを予約しているのよ。誕生日の翌日予約していたスカイレスト、ランシャノアールに6時よ」

「それはまぁ、雪乃が行きたいのなら勿論付き合うけど、ちょっと悪趣味だなと思うよ」

康介さんは苦笑する。
誕生日の翌日予約していたホテルのディナー。
この離婚問題は、あの日そこから始まったのだから、同じ場所で終わらせようと思った。


「個室を予約したからゆっくり食事を楽しみましょう」

「俺に対する戒めだな。けど、これは俺たち夫婦の門出を祝う食事だと思って、記念に堪能するよ」


「一生忘れられないディナーになるのは間違いないでしょうね」


雪乃は背中の空いた綺麗な黒のワンピースを着た。
フォーマルな装いは今夜の勝負服だ。

誰もが振り返る程、美しく妖艶に見える雪乃の姿に康介も目を奪われている。



『さぁ、断罪の始まりよ』

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