漆黒の貴公子と亜麻色の姫
教室について自分の席を探ると、やっぱり単語帳はそこにあった。
「よかった……」
教室を出て寮に戻ろうとすると、ふとどこからかピアノの美しい旋律が聞こえてくるのに気がついた。
あまりの音色の美しさに、いても立ってもいられなくなって音の鳴る方へ歩みを進める。
教室から一番近い第一音楽室を少し覗くと、月明かりに照らされたあまりにも美しい男の人が、ぴったっと演奏を止めてこちらを見た。
「っ…………!」
男の人が、息を呑むのが分かった。
どうしよう。
演奏の、邪魔しちゃった?
おそるおそる彼の顔を見ると、すごく睨んだような目つきでこちらを見ていて、わたしは慌てて音楽室を後にした。