極道の推し活、始めました。〜クールな若頭は童顔女子大生を寵愛して離さない〜
「にっ…仁睦さ、」
仁睦さんは私の身体を自身の背中に隠すようにして、ニセ光くんから私のことを守ってくれる
車から降りたことで少し冷静になったのか、状況が少しずつ見えてきた。
国道を走っていたと思っていた車はいつの間にか人気の少ない路地に入っていたみたいで、周りに他の人は今現在見当たらない。
いや、正確に言えばもう一人…よく知った顔の人間が車の前方に立っているように見えるが…彼は物凄く不機嫌なのか怒っているのか…私のことをこれでもか、というほど怖い顔で睨んでいる。……ごめんね、新次郎。
「……助かったぁ〜、もうその女に用はないんで連れて帰ってもらっていいですか?」
ニセ光くんの発言がやけに大きく聞こえた。先程車の中で言っていた通り、彼は仁睦さんと揉め事を起こすつもりは無いらしい。
無くしてしまった財布の行方は気になるが、何事もなく終われるならそんなにいいことは無い。誰もケガしないうちに解散っ、
「─…西園寺 灯《あかり》」
低い声で一言だけ、そう呟いた仁睦さんに…車内にいるニセ光くんは大きく目を見開いて驚いたような表情を浮かべる