極道の推し活、始めました。〜クールな若頭は童顔女子大生を寵愛して離さない〜


「……離せ、お前の説教は後だ」


「どうせ怒られるなら、怒られるついでにもう一つワガママ言ってもいいですか」


「いい加減にしろ、それとも…お前が代わりに撃たれるか?」



腕を下ろすことなく、視線だけ私に寄越した仁睦さんの目は…とても怒っているように見えた



──それが…凄く嬉しかったんだ。
怒ってくれる人が居るなんて、幸せな事だよ



「……私、車に乗れないんです。乗らないんじゃなくて乗れないの。前に剛田さんの車から飛び降りた時も…無理をして乗ったから途中でパニックになって飛び出した」



「……後で聞く、いまここでする話じゃない」


「大好きだった。車に乗って家族で遠出するのも、ドライブに行くのも…大好きだったのにいまは怖くて仕方ないの」


「…聞こえなかったのか?英里、いい加減っ」


「─…目の前で人が殺されたりしたら、私はこの先仁睦さんの目を見られなくなるような気がする。だからやめてください、お願いします」



車に乗るのが怖い、なんて自分から人に話すようなことは今まで無かった。不幸自慢みたいなことをするのは嫌だったし…同情されるのも何だか気分が悪かった。



でもいま、私がこの話をしたことは確かに意味があったと思える。だって頑なに下ろさなかった仁睦さんの腕が静かに下ろされたから─…




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