極道の推し活、始めました。〜クールな若頭は童顔女子大生を寵愛して離さない〜
安全運転で走行しているバイクの上で、背後から仁睦さんのことをギュッと抱きしめてその温もりを全身で楽しませてもらう。
なんだか一緒にいることが当たり前みたいになりつつあるけど…忘れてはならないのは彼には許嫁がいるということだ。
それはどうにも揺るがない事実、私にどうこう出来る話ではない現実。
「─…着いた、」
バイクが停車して、私を抱き上げて降ろしてくれた推し。ヘルメットを脱いで視界に入った光景に驚いた。
「……あの、私は沈められるのでしょうか」
「馬鹿なこと言ってねぇで行くぞ」
「いやっ、だって!何で海…?!こんな真っ暗な場所でドライブなんてっ、」
「国道を走るなんて言った覚えはない」
──…なんだって?!!
真っ暗な海沿いの補正されていない道で降ろされてしまった私は、この後自分が海に沈められる末路を悟った。
俺が殺してやる、みたいなことを何度か言われたことを決して忘れていた訳では無い。
デート、と嘘をついて私を沈めようとするなんて…最後まで鬼畜な人だなぁ…と思いながら仁睦さんの温もりを少しでも長い間感じていたくてギュッと手を握った。
「…感傷に浸ってるところ悪いが、車を待たせてるからそろそろ行くぞ」