極道の推し活、始めました。〜クールな若頭は童顔女子大生を寵愛して離さない〜
どのくらい経ったか…時計を見ていないので時間は分からないけど、結構な時間私は仁睦さんの膝の上にお邪魔していた気がする。
「……英里」
停車した車の中で、剛田さんが降りたことを確認したあと…仁睦さんは内ポケットに手を入れたので、てっきり黒い塊が出てきてBANされるのかと思いきや…出てきたのは別の意味で黒い塊─…私のスマートフォンだった。
「……え、スマホっ…返してくれるの?!」
「制限をかけて無断で出ていかれるくらいなら、通信手段を渡しておく方がマシだと判断した」
「えー…難しい言い方されても分からない!つまりこれで友達と連絡をとってもいいってことだよね?!」
「……まぁ、そーいうことだ」
やった〜…、と仁睦さんの膝の上で身体をユサユサと揺さぶりながら喜んでみせると、目の前の推しが優しく微笑みながら私を見てくれている…ような気がしたので、恥ずかしくなってきて何気なく手元のスマホをタップして、久しく目にしていなかった画面を開いた。
ロック画面は推しである仁睦さんの脱ぎたてホヤホヤジャケットの写真にハートを散りばめて加工したもの。それを見られたくなくて…慌ててロック画面を解除したことにより、ホーム画面を仁睦さんに見られてしまった。
いや、というより…あまりにも近い距離に居るので見えて当然な部分はある。
─…別に、ただの家族写真だ。
他人の仁睦さんからすれば今より幼い顔をした私を兄の万里が後ろから抱き締めるようにしてハグしてくれている…って、そんな…子どもの頃の兄妹の写真。
八つ…歳が離れていたので、この写真をみれば皆が家族との写真、親戚のお兄ちゃん、、と勝手に想像して何も触れてくることは無かったので…当然仁睦さんも同じような反応、もしくはスルーしてくれる…そう思っていたのにっ、
「─…っ、、ユキ…?」
突然、血相を変えて私の手の中にあったスマホを奪い…画面を食い入るように見つめる仁睦さん。予想外すぎる反応に困っていると─…
「おまえっ、何者…?ユキの、知り合い…?」
仁睦さんは忘れてしまったのだろうか、私の苗字が"由岐《ユキ》"だということを。もしかしたら彼は兄─…万里と、知り合いだったのかもしれない。