極道の推し活、始めました。〜クールな若頭は童顔女子大生を寵愛して離さない〜
「高校の時、学校は違ったが…よくアイツと二人で放課後バイクに乗って出掛けた」
「……お兄ちゃん、免許持ってたんだ」
「いや、ユキは俺の後ろに乗ってたから…免許は持ってなかっただろーな」
私よりも先に仁睦さんと出会って、仁睦さんにバイクに乗せてもらっていたとは…血は争えませんな、兄上。
「アイツは自分のことを"ユキ"としか名乗らなかったから…それが名前だとばかりに思っていたが、苗字だったんだな」
「私も同じユキですよ」
「あぁ…そーだな。だが…高一の夏に最後に会って以来、ユキの姿を見ることは無かった」
さっきから感じていた妙な違和感の正体が分かった。仁睦さんは兄、万里のことを…"生きている人間"だという扱いで話している。
──…知らないんだ、、
「…アイツ、いまどーしてる?あの頃のユキは酷く妹を溺愛してたバカな奴だったが、、まさかその妹を今俺が囲ってるなんて知ったらアイツ…すげぇ怒って怒鳴り込んでくるだろーな」
高校が違うということは、二人は何処で出会ったのだろう?年齢を聞いたことは無かったけど仁睦さんは兄と同じ歳だったのかな?
当時私は自分も意識が無かった為、兄や両親の葬儀には参加出来なかったが…高校が違う仁睦さんには、兄の死を知らせる手段が無かったのだろうか?他の友達とは仲良くなかったの?
「……英里?」
兄のことを語る仁睦さんの表情は見たことがないくらい優しい顔をしていた。…怒ってくれる兄はもうこの世には居ないことを、とても自分の口から伝えることは出来ず…ただ黙って涙を流すことしか出来なかった。