極道の推し活、始めました。〜クールな若頭は童顔女子大生を寵愛して離さない〜
「─…で、どーなんだよ。リハビリの方は」
ヘビースモーカー新次郎は私に構うことなく隣で煙草に火をつける。
「それがなんと、仁睦さんという名のプレミアムシートに座らせていただきまして…その間は幸せの絶頂にいるあまり車の中に居るということを忘れましてですね」
「あー…要するに、ただのアホか。」
「…ちょっと?聞こえてますよ?」
「そんなもん、なんの意味ねぇだろ…試しに若頭以外の人間とドライブデートってやつしてみれば?秒でアウトだろーけどな」
そんな意地悪、言わなくてもいいのに。
「前にも言ったが、変に期待するのはやめろよ」
「……期待?」
「若頭には許嫁の女がいるってこと、忘れんな?あの女を敵に回したら、家が燃やされるよりもっと恐ろしい目に遭うぞ」
家が燃やされるより恐ろしいことって…なんだろ?車と家の次は何が燃える?……大学?
「若頭を信じるのは勝手だが…いざとなったらお前よりあの女を選ぶと、俺はそう思ってる。その時無駄に傷つきたくねぇなら…推し活止まりで手を引くのが賢い選択だと俺は思う」
吸っていた煙草を携帯灰皿にしまって、隣を歩く私のことを見下す新次郎は…やっぱりどこか以前より大人びて見えた。この短期間で彼はどうやら大人の階段を駆け足で登ってしまったみたいだ。