極道の推し活、始めました。〜クールな若頭は童顔女子大生を寵愛して離さない〜
「─…英里…?」
染谷氏に言われたことが衝撃的すぎて、一人放心していたところに…帰宅してきたと思われる仁睦さんに名を呼ばれてハッと顔を上げた。
「に、仁睦さっ……」
「…ここで何してる?いま何時だと思って、」
「それはっ…私のセリフです!いま何時だと思ってるんですか!真っ直ぐ帰ってくるって言ったのにどこで何シてっ」
「真っ直ぐ、帰ってきてこの時間だ」
「うそっ、こんなに遅くなるわけ…」
「……終わる時間を伝えなかったのは…悪かった。でもこんな風に玄関で待たれるのは迷惑だ。部屋に戻るぞ─…染谷、悪かったな。後は俺が世話するからお前はもう下がっていい」
仁睦さんは私を半ば強制的に立たせると、腕を引いていつもの部屋までの距離を無言で歩く。
襖を開いて部屋に足を踏み入れてすぐ、私を見て盛大なため息を吐いた。
「……他の連中の前では妹として振舞え、っと言ったよな」
そこで初めて…先程、染谷氏の前で”仁睦さん呼び”をしてしまったことに気がついた。
「……ごめんなさい、お兄ちゃん」
「もう遅い……今は、お前の兄貴じゃねぇだろ」
兄では無い、と言った後すぐに…私のことをキツく抱きしめてくれた仁睦さん。信じてあげられなかったことを…恥ずかしく思った。