極道の推し活、始めました。〜クールな若頭は童顔女子大生を寵愛して離さない〜
大学の中で護衛をする……なんて言っていた西園寺殿はもはやなんの意味も果たしていない。
予定ではあと一限受けて帰るつもりだったのでお迎えが来ることもない。なので麗奈さんと二人で大学を出たところで仁睦さんや新次郎に見つかることもない。
「ここ、近くだから……来たことあるかな?」
大学から少し歩いたところにあったカフェ。友人たちが美味しいと言って騒いでいたのを聞いたことはあるが、自分が訪れたことはなかった。
「いえ、初めて来ました」
「えー…もったいないなぁ」
って……こんな世間話は私たちの間には必要ない
席に案内されてすぐ、メニューを見ることも無く真っ先に私が彼女に問いかけたのは─…
「……仁睦さんのこと、好きですか?」
って、それだけ。私がこの人に聞きたかったのはこれだけだ。
「捨て駒の妹のくせに、生意気ね。そんなこと聞いてどうするの?」
「大事なことだから、答えて欲しいんです」
「あぁ…そう。まぁ好きか嫌いかでいうなら…普通に好きかな?カッコイイし……身体の相性もいいし?でも必要最低限の会話はしない、って感じでなんの面白みもないところはちょっと残念」
…………そんなものか。政略結婚なんて、結局そんなもんなんだ。
「……どうしてそんなこと、聞くの?」
「同じくらいの質量の好きなら、真っ向勝負しようって思ったんですけど……その程度なら別にいいかなって」
「…………は?」
「その程度の関係なら、どうせすぐにダメになるじゃないですか。だから良かったです。ありがとうございました」
ご令嬢様と仲良くパンケーキなんて食べたくないので何も頼むことなく席を立って、振り返ることなく店を出た。