極道の推し活、始めました。〜クールな若頭は童顔女子大生を寵愛して離さない〜


消えてもらう、と言ったわりに……麗奈さんの手は震えているように見えた。おそらく彼女の中にも私を助けたいという良心的な思いが少なからず存在するのだろう。



仁睦さんや新次郎、西園寺殿がそばにいない今の私なんてただの無力な女子大生だ。


彼女が何かしなくても、手下のような人間が近くで待機しているのだとしたら…呆気なく捕まって人生終了のゴングが鳴ることだろう。



私たちの会話が何かしらの理由でどこかから盗聴されていたのか、麗奈さんがどこかに通話を繋げたまま私と話をしていたのか…真相は分からないが、タイミングを計ったかのようにすぐ側の道路に黒塗りのセダンが停車した。



後部座席から出てきた男性が、麗奈さんに一礼したのが見えて…あぁ、この人達に私を引き渡すことが彼女の役目だったのだと悟った。



「あの〜…私、逃げたりしないんで、、二分だけ彼女にお別れの挨拶をさせてもらっていいですか?」



近付いてきた男性に手を合わせて”お願い”のポーズをして見せれば、彼は律儀にもその場で立ち止まり黙って動きを止めてくれた。



時間が無いので手短に…お別れの言葉を伝えることにしよう。




「仁睦さんの許嫁が、あなたのような人で良かったです」


「……っえ?」



< 184 / 214 >

この作品をシェア

pagetop