極道の推し活、始めました。〜クールな若頭は童顔女子大生を寵愛して離さない〜
「……仁睦さんの、嘘つき」
今日ばかりは言わせてもらう。だって本当に嘘をつかれたし…いつもの言い訳は通用しない。
「私のこと、貰ってくれるって言った」
「ここを出た後の俺と一緒に居ても、お前が幸せになれるとは思えない。幸せにしてやる自信もない」
「そんなっ…私は若頭だからって理由で仁睦さんのことを推してたわけじゃないっ!」
「どーだろうな。出会い方が普通じゃなかったから…惹かれただけかもしれねぇだろ」
確かに…出会い方は普通ではなかった。でも私が仁睦さんを”推し認定”したのは、仁睦さんが若頭という地位につく人だと知る前だったはずだ。
出会ったその瞬間、ただ単純に惹かれた…その美しすぎる顔面に。一目惚れというやつだ、きっとそうなんだ。
「仁睦さんが追い出されたら…新次郎がなるの?」
突然の私の問いかけに、仁睦さんは目を見開いて驚いたような表情をみせる。
「新次郎が若頭サマになったら…私は新次郎を好きだって言って、彼の後を追いかけると思う?」
「待て、英里……お前、どこでその話しを、」
「関係無いよっ…仁睦さんが若頭でも、そうじゃなくても。若頭だから好きになったんじゃない、そんなヤンキーっぽい怖い世界の地位なんて別に凄いともなんとも思わない」
「……お前なぁ、」
「髪を撫でてくれる仁睦さんの手が大好き。火事で死にそうになったとき抱き締めてくれた仁睦さんの腕の中が恋しい。あの時死守したジャケットは今も私の宝物なの」
私の好きな人はどこぞの裏社会の若頭サマです、なんて自慢に思うことはないけど─…
火事の時も、車でパニクった時も私を見つけ出して迎えに来てくれる優しい人だってことは…声を大にして全世界に自慢したい。