極道の推し活、始めました。〜クールな若頭は童顔女子大生を寵愛して離さない〜


「仁睦さんが追い出されるなら、私も一緒にセットで追い出される。だって兄妹でしょ?置いていかれたら寂しいよ」


「……安全なわけが無い、ここを出れば俺に恨みを持つ人間にすぐにでも消される」


「そんなことは絶対に有り得ない」


「お前には理解出来ないことだ」


「私が一緒だから、仁睦さんが消されるなんて未来は絶対絶対ありえないっ!」




またバカなことを言っていると思われるかもしれないが、こう見えて死にそうになったことは既に何度も経験がある。



普通に現代社会を生きていれば、いつ死ぬか分からないリスクなんてみんな背負っている。事故や病気、無差別な犯罪……仁睦さんだけじゃない、ある日突然大好きな人が居なくなる辛さを私はとてもよく知っている。─…だから、



「一緒にいる、私は窮地を何度も乗り越えてきたラッキーガールだから。そばに置けば仁睦さんに危険が及ぶことは絶対にありえません!だからこれからも一緒に居させてください…お願いします」



出来るだけ笑顔を作って…精一杯笑って仁睦さんを見上げた。ブサイクだっていつも呆れられてきたけど、私は笑顔が一番可愛いって、お兄ちゃんは最後にそう言って笑ってたから─…



「……お前は、バカだな」


何か諦めたように脱力した仁睦さんが、身を乗り出してきて…座ったままの私のことをキツく抱き締めてその腕の中に閉じ込める。



「俺から離れられる唯一のきっかけを、自ら手放すなんて…本当に、バカだな…英里」


「今更離れるなんて、ありえないんだよ。バカは仁睦さんの方です。試したりして……ひどいっ」


「……今よりもっと、お前を危険な目にあわせることになるかもしれない。ここを出ればお前の為に動ける人間は俺一人しか居なくなる」


「じゅーぶんです。ていうか、普通そうでしょ?女の子を守ってくれる王子様はどんな物語でも一人しか存在しないです。むしろ独り占めしちゃっていいんですかって感じです。その前に…最低限自分の身は自分で守ります。」


「……後悔、しないか?何も無い俺なんかに着いてきてお前っ…本当に後悔しない?あとになって離れたいって嘆いても、手放してやれる自信なんて俺にはない」



手放してあげないのは、私の方ですよ?






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