桜の華 ― *艶やかに舞う* ―
6

「二人って?」

「桃の旦那と淡井恵子よ」


「それってどこで?」
桃は、訝し気に尋ねた。


「そうよ、その場所……」
場所に語意を強める舞。


「そうなのよ、見かけた場所がね、大通りのある駅前なら私もいうほど
不自然に思わなかったかもしんないけど……。

駅の横に添って東西に延びてる道一本挟んで南北に細長い道が
あるじゃない?

ほらっ、自転車とかバイクなんかが連ねて置いてある道路。
もう軽自動者も通れないくらいの細い道」



「知ってる……」



「私は家から駅までいつもミニバイク使うからさ。
その日も駐輪しようとしててそれでね、二人に気付いたわけ。

私のほうはヘルメット被ってたし、恵子は熱心に桃の旦那に何やら
話しかけてたから全く私には気付かなかったけどね」


「二人はどんな話をしてたの?」


「それがさ、ひっきりなしに電車が通るからほとんど聞き取れなかった
のよね。だけど"ある意味深なところ"だけはっきりと聞こえたのよ。

『いいじゃない。黙ってれば分かんないんだから、これからも会おうよ』
だったの」




「それって……」


「どう転んでも意味深だよね。
だけど揉め事を桃に連絡するのもどうなんだろうって思って
知らせなかったんだけど……。

今日たまたま会えたから聞いたこと話しとこうと思って」


「うん……」

舞からの仰天話を聞き、桃は涙目で相槌を打った。
それと共にどうにかなりそうな気持を宥めるのに苦労した。

そんな桃の気持ちを知ってか知らでか、舞の話は更に続いた。
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