呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「目が勝手に動くんだ。むしろ、にらむだけにとどめていることを褒めてほしいくらいだ」
「もう……」

 ダグラスが一秒でも早くこの場を去りたそうにしているのに気がついて、ハンナは彼に声をかけた。

「ダグラス大臣。どうもありがとうございました。忙しいところ、呼び止めてしまって申し訳ありません」
「いえいえ。では、わたくしはこれで」

 丁重に頭をさげたかと思うと、彼は脱兎のごとく逃げていった。

(本当は、もうひとつ質問があったのだけれど)

「ダグラス大臣は忙しそうなので、エリオットさまに質問してもいいでしょうか?」

 ふたりきりなのでエリオットと、呼び名を改めた。

「もちろん。私に答えられるものならなんでも教えるよ。だから……」

 彼はグッと身体を寄せて、ハンナの耳元でささやいた。

「必要以上に私以外の男に近づかないでくれ。嫉妬でこの身が焼けついてしまう」

(ダグラス大臣との会話は必要なものだったと認識していますが……)

 そう反論すべきだろうか。

 でも、公の場ではエリオットの嫉妬に呆れているふうを装っているけれど……白状すると実は結構嬉しく思ってもいた。
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