呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 貴族として生まれた以上、恋愛結婚などありえない。

 愛し、愛され、そんなものは物語のなかだけ。

 そう言い聞かせて自分を律してきたけれど、本当は誰よりも甘い恋物語に憧れていた。

 エリオットが注いでくれる惜しみのない愛は、ハンナを世界で一番幸福な女性にしてくれる。

 ハンナはポッと頬を染め、小さく答えた。

 「では、これからはまずエリオットさまに質問することにします」

 まったく色っぽくない政治や外交の話をしながらだけれど、ふたりで中庭を散歩するひとときは楽しかった。

 エリオットはちょうど会議と約束の合間で時間が空いていたらしい。

「たった半年で、すっかり王妃らしくなったな」
「いえ。もっともっと勉強しなくては!と気合いを入れていたところです」

 ハンナがグッとこぶしを握ってアピールすると、彼は破顔して白い歯を見せた。

「ハンナはおっとりしているように見えて、意外と熱血だ」
「たしかに、そのとおりかもしれないです。昔から、努力とか忍耐とかそういう物語が大好きでしたし」
「努力と忍耐か。本当にそうだね。なんの取り柄もない昔の私を、ハンナは見捨てずに信じてくれた」

 ハンナはゆるゆると首を横に振った。

「エリオットさまは当時から、誰にも負けない鮮やかな光を放っていましたよ。この方は原石なんだなと私は確信しましたもの」

 あの離宮での日々を思い出すと、心がポカポカと温かくなる気がした。

「ハンナ」
< 104 / 136 >

この作品をシェア

pagetop