呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 エリオットに呼ばれ、彼と視線を合わせる。サファイアの瞳、これだけはあの頃となにも変わっていない。

「好きだよ」

 エリオットはそう言った。もう何度聞いただろう。でも、何度聞いても胸がキュンと甘く締めつけられる。

「真面目で努力家で、ほんの少し頑固。他人のために一生懸命になれる君を……心から尊敬し、愛している」
「あ、ありがとうございます」
「それに、この少しだけ癖のある絹糸のような髪も、ルビーのようにきらめく瞳も、うなじのホクロも、足の小指の爪が少し変わった形なのも……」

 エリオットが口にするハンナの美点がだんだんと変態じみてきて、恥ずかしさに視線が泳ぐ。

「エリオットさま。もう、そこまでで」

 ハンナが強引に話を打ち切ると、彼はにっこりと無邪気に笑んだ。

「君のすべてを、心の底から愛おしく思っている」
「エリオットさまったら」

 ふたりは優しいほほ笑みを交わした。

「でも」

 言って、彼はハンナの肩に手を添えた。

「がんばり屋な君が好きだが、くれぐれも無理はしないでくれよ」
「はい、大丈夫ですよ。私、頑丈さだけは誰にも負けないと思っているので。むしろ……」

 ハンナは心配そうに彼の顔をのぞく。

「エリオットさまのほうが。今日は、あまり顔色が優れないですよ。持病の咳も時々出ているようですし」
「私は大丈夫さ。ちゃんと侍医から薬をもらっているからね」
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