呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 それが今や、コルセットを脱いだ場面を想像するだけですべてが済んだ。

 魔法レベルが軽く五段階ほどアップしているような実感があった。

(やっぱり魔力があがっている……わよね?)

 不思議なこともあるものねと思いながら、今度は高い位置でまとめてあった髪をほどく。

 これも魔法を使ったが、やはり以前より精度が高くなっていた。

 楽な着心地の簡素なドレスに着替え直して、ハンナは衣装室を出る。

 王妃の執務室として使っているこの部屋は南向きに大きな出窓がついていて、ハンナはそこから中庭を眺めるのがとても好きだった。

「いいお天気ね」

 半分だけ開けていた出窓からふわりと優しい風が吹き、ハンナの髪を揺らす。

「あら」

 よく見れば、白い窓枠の端っこで珍しい小鳥が羽を休めていた。

 身体は綿菓子のように真っ白で、大きな羽だけが赤、青、碧と極彩色に染まっている。

(かわいい。エリオットさまの花に、少し似てるかも)

 小鳥の羽が彼の贈ってくれた虹色の花を思い起こさせ、ハンナは顔をほころばせた。

 ソロソロと小鳥に近づいてみたが、焦らすようにパッと空へ飛び立ってしまった。

 名残り惜しそうに空を見あげていたハンナの背にナーヤの声がかかる。

「王妃さま」
「あぁ、ナーヤ。後片づけをありがとう」

 ハンナの視線の先を、彼女も見つめた。

「なにを見ていらしたのですか?」
「珍しい小鳥が遊びに来てくれていたの」
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