呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 ハンナが椅子に腰かけると、ナーヤがティーカップに琥珀色の紅茶を注いでくれる。

「聞きましたよ。王妃さまのディーン語がすばらしいと大使が感激していたそうですね」

 隣国であるディーン公国の言葉はオスワルト語に近しく、習得はそう難しくなかった。

言語体系のまったく異なるナパエイラ語に比べたら優しいと思えるくらいだ。

「昔から、語学だけは得意なの。人間、なにかひとつくらいは取り柄を与えてもらえるものなのね」
「まぁ! 王妃さまには語学以外にも優れた点がたくさんあるじゃないですか。決して驕らない性格、誰に対しても公正ですし、ルビーのような赤い瞳がすごく綺麗で、ブルネットの髪も知的で気品がありますわ」

 自分を崇拝する変人はエリオットくらいだと思っていたが、ここにもいたようだ。

 ナーヤは鼻息荒く、ハンナを褒めまくってくれる。

「その、形がよくて豊かなバストも羨ましいかぎりです。私なんて、ほら! 胸よりおなかのほうが出ているんですよ」

 ややふっくら気味のおなかを抱えて、ナーヤは明るく笑う。

「そうだ。王妃さまの魔法で、このおなかの肉を胸にえいやっと移動させたり……は無理ですよね、さすがに」

 苦笑するナーヤに、ハンナは思いきって声をかける。

「ねぇ、ナーヤ。今日は少し、一緒にお茶をしてくれないかしら?」
「え?」
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