呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 自分は侍女であって友人ではない……と渋る彼女を、『相談したいことがあるの。だからこれもあなたの業務のうちよ』と説得して席につかせた。
 
「あぁ! このスコーン、頬が落ちてしまいそう」

 嬉しそうにおやつを頬張る彼女を見つめ、ハンナもほほ笑む。

「ナーヤの入れてくれた紅茶もおいしいわ」

 最後のひと口を放り込んだあとで、彼女はハッと我に返った顔になる。

「嫌だ。私ったら、ついつい甘いものに夢中になってしまって。申し訳ありませんでした、王妃さまのご相談ってなんでしょうか?」

 彼女はキリッと真面目な表情に戻ったものの、唇の端にスコーンのカスが残ったままだ。

 ハンナはクスクスと笑いながら話しはじめた。

「そんなに深刻なものではないから、気楽に聞いて。たしか、あなたも魔法が使えたわよね?」
「はい。でも私の魔法は――」

 ナーヤの得意は、植物魔法。作物の成長を助けたりできる、有益な能力だが……。

「王宮に仕える身としては、あまり役に立たないので。田舎魔法って馬鹿にされますし」

 彼女は唇をとがらせて、肩をすくめた。

 ナーヤの気持ちはよくわかった。ハンナの使う生活魔法なども、お役立ち度は高いが地味なので下に見られがちだ。

 逆にたいした利用価値はなくとも、派手でかっこいい魔法はチヤホヤされる。

「ナーヤの魔力は子どもの頃から一定? 急にレベルアップしたり、逆に調子が落ちたりしたことは?」
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