呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「……ハンナの魔力、以前よりずいぶんと高まっているようだな」

 その様子を見ていたエリオットも感心したようにつぶやく。

「えぇ、そうなんです。自分でも驚くほどにできることが増えていて」

 今のハンナは散らかり放題の部屋を一瞬で綺麗に片づけられるし、簡単な料理なら魔法で作ってしまえる。

 そうそう、先日は枯れてしまった花をもう一度美しく蘇らせることもできた。

(やっぱり、高い魔力は何かと便利だわ)

「さぁ、どうぞ」

 独特の香りがする薬湯をカップに移して、彼に手渡す。

「ありがとう」

 エリオットの喉が動いて薬湯を飲み干すのを見届けてから、ハンナは真剣な目を彼に向ける。

「なにか、よくないことが起きているんですね」
「――まだ予兆、だけれどね」

 エリオットは苦笑して、今夜遅くなった理由を話してくれる。

「王国西部のシーレン地方で不穏な動きがあるようでね」
「不穏……とは?」

 眉間にシワを寄せ、彼に詰め寄る。

「武器や軍馬の取引量が急に増えた。それから、傭兵たちがシーレンに集まっているという噂もある」

 ハンナはゴクリと息をのみ、口元を両手で押さえた。

「それはつまり、反乱の……」
「まだ、可能性の話だ。どこに戦いを仕掛ける気なのかもわかっていないしな」

 エリオットはそう付け加えたが、皮肉にも彼の表情から察せられてしまった。

 きっと、王都への、エリオットへの反逆の予兆なのだろう。
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