呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「だが、人間はみな……多かれ少なかれ秘密を抱えているもの。優しい兄上が、私の知らぬ顔を持っていたとしても不思議はない」

 エリオットはフューリーの反逆を疑っているのだろうか? 

(フューリー・イルヴァン公爵。直接、言葉を交わしたことは一度もないけれど)

 次期国王に決まりだと評されていたほどの人物。ただの子爵令嬢だった頃のハンナには雲の上の存在だった。

(あれ? でも、たしか――)

 ハンナはあることを思い出し、エリオットに尋ねてみた。

「エリオットさまはご存知ですか? 私がナパエイラに嫁ぐことになった経緯を」

 当時は第一王子だった、フューリーのすすめによるものだったのだとハンナはエリオットに説明する。

「なに? そんな事情があったのか?」

 エリオットはなにも知らなかったようだ。かなり驚き、困惑した顔を見せる。

「当時、私もちょっと妙だなと思ったんです。たかが子爵家の娘の婚姻を、わざわざ王子殿下が斡旋してくださるなんて」

 そこまで言ってから、ハンナはふと我に返り口をつぐむ。

「でも、これは今回の反逆疑惑とはなにも関係ありませんよね。忘れてください」
「いや。少なくとも私には……有益な情報だった。なるほどね、君の不可解な結婚はフューリー兄上の差し金だったのか」

 芯から凍えるような冷酷な声を、エリオットはぽつりと落とした。

 
 
 


 



  
  
 
 
< 117 / 187 >

この作品をシェア

pagetop