呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 彼が王宮に、自分に反旗をひるがえすつもりらしいという点は別にどうでもよい。好きにすればいいことだ。

 ただし、自分の世界からハンナを奪ったのが彼だというのならば……エリオットは彼に相応の罰を与えなくてはならないだろう。

 青い瞳に、ほの暗い影が差す。ハンナには決して見せない顔だ。

 そのとき、エリオットが見つめる闇のなかに、金色に輝くふたつの瞳が出現した。

 闇色の身体を持つコウモリだ。それはエリオットの前でシュルシュルと人に形を変える。

「クロか。今夜は別に呼んでいないぞ」
「……なんとなくだ」
「そう」

 ふたりの声は夜に溶けていく。しばしの沈黙のあとで、ハーディーラが口を開いた。

「ちんちくりんに……いつまで黙っておくつもりだ?」
「そうだな、できたら最期まで。でもそれは難しいかな」

 エリオットがこの世で一番好きなものはハンナの笑顔で、一番嫌いなものはハンナの泣き顔。

「ハンナが泣くところは、できれば見たくないんだけどね」
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