呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
* * *
幼い頃は、三人の兄王子たちとの自分の境遇の差をうまく理解できなかった。
自分のもとにも、いつか誰かがやってきて幸せになれるものだとエリオットは信じていた。
だが、どれだけ待っても古ぼけた離宮に迎えは来ない。エリオットのそばにいるのは、無口な衛兵がひとりと、ふらりとやってくる謎の青年ハーディーラ――全身黒ずくめだからクロと呼ぶことにした――だけだった。
エリオットは彼に尋ねる。
「ねぇ、クロ。いないほうがマシってどういう意味かな?」
「なんの話だ?」
「この前、珍しく王宮に呼ばれて行ってきたんだけど……あそこの人たちは俺のことをそう言うんだ」
エリオットは彼らの口マネをしながら、ハーディーラに伝えた。
『卑しい女の胎から生まれただけでも恥なのに』
『王族の血を受け継ぎながら魔力がないとは、前代未聞。王家の恥』
『いっそ生まれてこなければ……いないほうがマシな王子ね』
エリオットは空を見あげる。
オスワルトには珍しい、曇り空だ。どちらが天で、どちらが地か、わからなくなりそうだった。
濃灰色にくすむ空に……堕ちていく。そんな錯覚を覚えた。
「俺が死んだら……みんな、喜んでくれるのかな?」
ハーディーラはケケッと笑う。
「ま、そうなんじゃないか。けど、お前は〝みんな〟を喜ばせたいのか? なんのために?」
「別に……喜ばせたくもないなぁ。なにかしてもらったわけでもないし」
「じゃ、いいだろ。〝みんな〟なんて放っておけ」
幼い頃は、三人の兄王子たちとの自分の境遇の差をうまく理解できなかった。
自分のもとにも、いつか誰かがやってきて幸せになれるものだとエリオットは信じていた。
だが、どれだけ待っても古ぼけた離宮に迎えは来ない。エリオットのそばにいるのは、無口な衛兵がひとりと、ふらりとやってくる謎の青年ハーディーラ――全身黒ずくめだからクロと呼ぶことにした――だけだった。
エリオットは彼に尋ねる。
「ねぇ、クロ。いないほうがマシってどういう意味かな?」
「なんの話だ?」
「この前、珍しく王宮に呼ばれて行ってきたんだけど……あそこの人たちは俺のことをそう言うんだ」
エリオットは彼らの口マネをしながら、ハーディーラに伝えた。
『卑しい女の胎から生まれただけでも恥なのに』
『王族の血を受け継ぎながら魔力がないとは、前代未聞。王家の恥』
『いっそ生まれてこなければ……いないほうがマシな王子ね』
エリオットは空を見あげる。
オスワルトには珍しい、曇り空だ。どちらが天で、どちらが地か、わからなくなりそうだった。
濃灰色にくすむ空に……堕ちていく。そんな錯覚を覚えた。
「俺が死んだら……みんな、喜んでくれるのかな?」
ハーディーラはケケッと笑う。
「ま、そうなんじゃないか。けど、お前は〝みんな〟を喜ばせたいのか? なんのために?」
「別に……喜ばせたくもないなぁ。なにかしてもらったわけでもないし」
「じゃ、いいだろ。〝みんな〟なんて放っておけ」