呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「お前のそれは……雛鳥の刷り込みと一緒だぞ。あのちんちくりんが好きなわけじゃない。やってきたのが別の女なら、多分そいつに惚れてた」

 ハーディーラは彼らしく皮肉めいた顔で言う。

 彼の言い分もわからぬわけではない。だが、エリオットにはどうでもいいこと。

「別の女性は誰ひとりとして来なかった。俺が出会ったのはハンナ。それがすべてだ」

 ハンナこそがエリオットの世界なのだ。

 ほかにはなにも望まない。彼女の笑顔さえあれば、それだけでよかった。

 だから……突然に告げられた別れは、エリオットには死も同然の苦しみだった。

 ハンナの不在はエリオットの世界の崩壊を意味するのだから。

 なにかすがるものがないと、自分はもう生きてはいけない。それを悟ったから、彼女とたくさんの約束をした。

「君が望むなら、俺は王になる」

 誰もが笑い飛ばす話だが、ハンナとの約束なら自分は叶えることができる。根拠もなくそう信じた。

「約束して、ハンナ。それでもなお、俺が君を愛していたら……そのときは俺のキスを受け入れてほしい」

 こっちはハンナに拒否された。自分は人の妻になる身だから、と。

 生真面目な彼女らしくてますます好きになったし、エリオット自身が拒絶されたわけじゃないことに安堵した。
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