呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 エリオットは約束を守ろうと思った。ハンナが守れなくても、自分は守るのだ。

 これから先の人生でどんな出会いがあろうとも、たとえハンナに二度と会えなくても、エリオットは彼女だけを愛し続ける。いや、守るという意識など必要ない。

 それは必然で、確定事項なのだから。

 最後に、一番大切な約束。ハンナ自身が願ってくれたもの。

「ナパエイラは寒い国で、あまり花が咲かないらしいのです。オスワルトのように、向こうでも美しい花々を愛でることができたら嬉しいなぁと思うのですが」

 彼女に花を届ける。

 この約束があったから、エリオットは生き続けることができた。

 これまで、本心からは手懐けたいと思っていなかったハーディーラを、完全に使役できるようにもなった。

 あれこれと策略を巡らせて、次期国王の座も手に入れた。

「できた。完璧だ」

 氷魔法をかけた凍りつく寒さの部屋のなかで、虹色の花が見事に咲き誇っている。

 ハンナがナパエイラに旅立って二年。ようやく約束の花を届ける準備ができた。

 だが……エリオットは逡巡するように視線をさまよわせる。

 どこらかともなく現れたハーディーラが、さげすみの笑みを浮かべた。

「いくじなし」
「……今のハンナの姿を見るのが怖いんだ。幸せに暮らしているのなら邪魔すべきでないとわかっているけど、実際に見たら俺はハンナの夫をこの手にかけてしまう気がする」
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