呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 エリオットは自分の両手を顔の前にかかげる。

 今の自分なら、堂々とハンナを娶ることもできるのだ。彼女の夫さえいなければ……そう考える自分の姿が容易に想像できてしまう。

 かすかに震える両手が血に染まっていく幻覚を見た。

「幸せとはかぎらないだろ。貴族の結婚など、九割は不幸だと聞いたぞ」
「それなら、なおのこと殺してしまう!」

 エリオットの女神を自分のものにしておきながら、幸せにしていないなど……許されるはずがない。万死に値する行為だ。

「いや、この場合は殺してもいいな。なんの問題もない。あぁ、けどハンナは人殺しとなった俺を許してはくれない気がするし……黙っておけばいいのかな?」

 ハーディーラは「めんどくせぇなぁ」と舌打ちする。

「んじゃ、俺さまがひとりでサクッと行って、渡してきてやるよ。で、幸せか不幸かも聞いてきてやる。あ、あと人殺しを許せるかどうか、だっけ?」

 空間移動をしそうになる彼を、エリオットは慌てて止める。

「それもダメだ」
「なんでだよ?」

「二十二歳になったハンナを、俺より先にクロが目にするなんて……絶対に許せない。間違いなく、ハンナはますます綺麗になっているだろうし」
「アホか。ちんちくりんが二年で美女になるはずないだろうが!」

 そんな応酬を繰り広げたあとで、結局エリオットは彼とともにナパエイラへ飛んだ。
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