呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
懐かしい思い出が蘇ってくる。
ハンナは彼の教育係――社交界でのマナーや女性との関わり方についてお教えする任務を担っていた。その一環として、そんな言葉を彼に伝えたことがあった。
「だから何度でも言うよ。ハンナは世界で一番美しく、私は未来永劫、何万回生まれ変わったとしても君しか愛せない」
「へ、陛下!」
「ハンナのかわいい唇が紡ぐのならば、罵倒の言葉でさえもご褒美だが……ふたりきりのときはエリオット、と名前で呼んでほしいな」
いったいどこで覚えたのだろう。エリオットは歯の浮くような台詞を口にする。
「陛下。まずは」
名前で呼ばないのなら返事をする義務はない。そう言いたげに彼はフイと顔をななめ上に向ける。
(おかしいわ。かつての彼はもっと、聞き分けがよく大人だったはずなのに)
ハンナは仕方なく、「エリオットさま」と呼びかけた。
その名を呼ばれたことが、よほど嬉しかったのだろう。エリオットはパッとサファイアの瞳を輝かせ、極上の笑みを浮かべた。
「十七年前のあの日、君が『エリオット殿下』と呼んでくれたから……私は自分の名前を好きになった。それまでは、誰も呼ばない自分の名前など忘れかけていたというのに」
「……エリオットさま」
「うん。ハンナが呼ぶと、これ以上ない素晴らしい名前だと思えてくるな」
美しい唇が動くさまにハンナは思わず見惚れてしまった。
ハンナは彼の教育係――社交界でのマナーや女性との関わり方についてお教えする任務を担っていた。その一環として、そんな言葉を彼に伝えたことがあった。
「だから何度でも言うよ。ハンナは世界で一番美しく、私は未来永劫、何万回生まれ変わったとしても君しか愛せない」
「へ、陛下!」
「ハンナのかわいい唇が紡ぐのならば、罵倒の言葉でさえもご褒美だが……ふたりきりのときはエリオット、と名前で呼んでほしいな」
いったいどこで覚えたのだろう。エリオットは歯の浮くような台詞を口にする。
「陛下。まずは」
名前で呼ばないのなら返事をする義務はない。そう言いたげに彼はフイと顔をななめ上に向ける。
(おかしいわ。かつての彼はもっと、聞き分けがよく大人だったはずなのに)
ハンナは仕方なく、「エリオットさま」と呼びかけた。
その名を呼ばれたことが、よほど嬉しかったのだろう。エリオットはパッとサファイアの瞳を輝かせ、極上の笑みを浮かべた。
「十七年前のあの日、君が『エリオット殿下』と呼んでくれたから……私は自分の名前を好きになった。それまでは、誰も呼ばない自分の名前など忘れかけていたというのに」
「……エリオットさま」
「うん。ハンナが呼ぶと、これ以上ない素晴らしい名前だと思えてくるな」
美しい唇が動くさまにハンナは思わず見惚れてしまった。