呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「ま、待ってください。彼女は死んだわけではありません。眠っているだけです。ですからどうか慈悲をっ」
 
 泡を吹くジョアンとは違い、この期に及んでもリリアナは自己保身に必死だ。

 エリオットは彼女の隣でカタカタと震えている魔術師に視線を向けた。

 本当に話を聞きたいのは彼だけだ。ハンナにどんな呪詛をかけ、それはどういう結末をもたらすのか。

「すべてを白状しろ。であれば、お前だけは罪を軽減してやってもいい」
「は、はひっ」

 ブルブルと震える声で彼はすべてを打ち明けた。

 依頼主はリリアナであったこと、彼女の望みはハンナの死。

 だが、呪詛をかけ間違えてしまい、ハンナは死ではなく長い眠りについた。

 エリオットは深いため息を落とした。

 高等な呪詛を扱えるのだから、男はそれなりの魔術師ではあるのだろう。しかし、絶望的になにかが足りないようだ。

 持って生まれた才能と実力は必ずしも一致しない。とくに魔法の分野では、才能はあっても使いこなせていない人間がゴロゴロいるのだ。かつてのエリオットもそうだった。

 だが、今回にかぎっては彼がポンコツでよかった。それによって、ハンナの命は守られたのだから。

「ハンナはいつ目覚める?」
「え、いや、その」

 魔術師は視線を泳がせる。

「正直に話せ。でないと、この場で八つ裂きにするぞ」
< 130 / 187 >

この作品をシェア

pagetop