呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
王国の西部に位置するシーレン地方は古くから鉱業の盛んな地域で、命知らずな荒れくれ者が多いことでも有名だ。
どことなく粗野な雰囲気の漂う街を、乾いた風が吹き抜ける。
「いいですか? くれぐれも、くれぐれも、正体がバレることのないよう気をつけくださいませ」
同行している近衛軍の指揮官アレクスが、ガタイのよさに似合わないささやき声でエリオットに忠告する。
「心配ない。自分が危険な場所にいることは理解している」
反乱の芽があるかもしれない土地だ。堂々と名乗って、やってきているわけではない。行商人のふりをしての、潜入調査だ。
「そもそも、陛下自らが赴く必要などありませんのに……状況を確認するくらいなら我々だけで十分」
「――国家の一大事かもしれないんだ。自分の目と耳で確かめたい」
「陛下のそういう姿勢は、とても尊敬しておりますが……心配なんです。決して、おひとりにならないようお願いいたしますよ!」
アレクスは人のいい、愚直な男だ。エリオットが耳障りのいい言葉で本音をごまかしたことには気づいていない。
自ら赴いた理由は、ただひとつ。
(ハンナ以外の人間を……完全には信用しきれない)
そう判断したからだ。もっとも、裏切者がいると決めてかかっているわけではない。
アレクスをはじめとした近衛軍の人間、そして王宮にいる重臣たち。彼らみな、信用に値する人物だと思っている。
ただ、油断は禁物だ。
(フューリー兄上はスパイを潜り込ませることがお上手のようだからな)
ハンナの最初の結婚の裏に彼がいた。
その話を聞いてすぐに、エリオットはフューリーの過去を洗った。すると、これまで知らなかった真実が浮かびあがってきたのだ。
どことなく粗野な雰囲気の漂う街を、乾いた風が吹き抜ける。
「いいですか? くれぐれも、くれぐれも、正体がバレることのないよう気をつけくださいませ」
同行している近衛軍の指揮官アレクスが、ガタイのよさに似合わないささやき声でエリオットに忠告する。
「心配ない。自分が危険な場所にいることは理解している」
反乱の芽があるかもしれない土地だ。堂々と名乗って、やってきているわけではない。行商人のふりをしての、潜入調査だ。
「そもそも、陛下自らが赴く必要などありませんのに……状況を確認するくらいなら我々だけで十分」
「――国家の一大事かもしれないんだ。自分の目と耳で確かめたい」
「陛下のそういう姿勢は、とても尊敬しておりますが……心配なんです。決して、おひとりにならないようお願いいたしますよ!」
アレクスは人のいい、愚直な男だ。エリオットが耳障りのいい言葉で本音をごまかしたことには気づいていない。
自ら赴いた理由は、ただひとつ。
(ハンナ以外の人間を……完全には信用しきれない)
そう判断したからだ。もっとも、裏切者がいると決めてかかっているわけではない。
アレクスをはじめとした近衛軍の人間、そして王宮にいる重臣たち。彼らみな、信用に値する人物だと思っている。
ただ、油断は禁物だ。
(フューリー兄上はスパイを潜り込ませることがお上手のようだからな)
ハンナの最初の結婚の裏に彼がいた。
その話を聞いてすぐに、エリオットはフューリーの過去を洗った。すると、これまで知らなかった真実が浮かびあがってきたのだ。