呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「魔法を使える者が集まり、必死に魔獣を食い止めていますが……数が多いもので、かなり苦戦をしいられています。近衛軍からも救援を出す準備をしております!」

 エリオットは立ちあがり、アレクスに指示を飛ばす。

「わかった。ただし、近衛軍の七割は王都に残せ。王都の守備が手薄になるのはいけない。不足する戦力は、私が補う。カヤックの街へ向かうぞ」
「――はっ。では私はただちに、近衛軍の編成を!」

 アレクスは一礼して、その場を辞した。

 ふたりきりになった部屋で、ハンナはふぅと重く息を吐く。

「北部のシーレンに反乱の気配があるなかで、南部の魔獣被害だなんて……」

 不運だわ、そう言いいかけてハンナはハッと息をのむ。

 エリオットはもうとっくに気づいているのだろう。考え込むような表情で唇を引き結んでいた。

「できすぎた偶然の裏には、〝誰か〟の思惑が働いているものですよね」

 誰かとは、おそらくフューリー・イルヴァン公爵。

 エリオットは反乱の首謀者を、実の兄でほぼ間違いないと確信している様子だった。

「あぁ。魔獣襲来と反乱は繋がっている可能性がある」

(フューリー殿下が故意に魔獣被害を引き起こした?)

 そう考えたから、彼は近衛軍の大半を王都に残すよう指示をしたのだろう。

 魔獣にかかりきりになっている間に、王宮を攻められては困るから。

「エリオットさま! 私にもなにかできることはないでしょうか?」
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