呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 エリオットはいやに艶っぽい男に成長していて、ちょっとした仕草からも色気がダダ漏れている。

 なにより……白状すると、好みのタイプなのだ。

(理想の男性像そのままだなんて……困りますわ)

 今、ハンナのいるこの部屋はオスワルト国王であるエリオットの私室。目覚めてからではなく、眠っている十五年の間も自分はずっとここにいたらしい。

 ちなみにエリオット本人のベッドは、ここと続き間になっている寝室のほうにある。ゆうべ、『心配だから今夜は一緒に』とハンナの隣に潜り込もうとする彼をどうにかそちらに追い返すのに苦労した。

「寒かったり、暑かったり、この部屋に不便はないか?」

 エリオットの気遣いに、ハンナはふるふると首を横に振る。

「とても快適です。さすがは王宮ですね。かつて……一緒に過ごした離宮とは大違い」

 ハンナはクスリと笑う。

 不遇王子だった頃のエリオットは、粗末な離宮に閉じ込められていたのだ。あの場所と比べると、ここはまるで楽園のよう。

 日当たりがよく、広々としていて、床も壁もピカピカに磨きあげられ塵ひとつ落ちてはないない。オスワルトの財力をつぎ込んだ上等な調度の数々は、触れるのが恐れ多い品ばかりだ。

「そうだね。ここはとても豪華だ。けど、君のいない場所は……私にとっては地獄でしかなかったよ」

 苦しげに眉根を寄せたあと、エリオットはハッとして、すぐに明るい表情を取り戻す。
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