呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
力が強まっているとはいえ、ハンナが使えるのは生活魔法。魔獣相手にはなんの役にも立たないかもしれない。
だがそれでも、この国とエリオットの力になりたかった。
ハンナの強い眼差しからエリオットはその気持ちを汲み取ってくれたのだろう。
嬉しそうにほほ笑み、ハンナの頬をそっと撫でた。
「ありがとう。私はカヤックの街にいる間、王都は君が守ってくれ。妻であるハンナにしかできない仕事だ」
彼だけを魔獣の跋扈する危険な地に向かわせるのは心配で、本当は一緒に行きたかった。
(エリオットさまのそばにいたい)
けれど、彼の言うとおり自分にも果たすべき務めがある。それを自覚したハンナは、力強くうなずいてみせた。
「――はい、お任せください」
数刻のうちに、彼はすべての準備を整え終えた。
「アレクス。お前には騎馬隊の指揮を頼む。私は特に魔力の強い者を連れて、ひと足先に向かうぞ」
エリオットは空間移動魔法が使える。精鋭たちを連れて、先にカヤックの街に入ると決めたようだ。
「クロ」
中空を見つめてエリオットがつぶやくと、音もなくハーディーラが現れた。
その瞬間、辺りが異質な空気に包まれる。冴え冴えとした静寂、闇の気配。
濃灰色の煙がエリオットを覆い、異界への扉が開いた。と同時に、ビュウと強い風が吹く。
「では、ハンナ。行ってくる」
「エリオットさま! どうかご無事で」
ハンナの目の前で、彼の笑顔は霧のように消えていった。
だがそれでも、この国とエリオットの力になりたかった。
ハンナの強い眼差しからエリオットはその気持ちを汲み取ってくれたのだろう。
嬉しそうにほほ笑み、ハンナの頬をそっと撫でた。
「ありがとう。私はカヤックの街にいる間、王都は君が守ってくれ。妻であるハンナにしかできない仕事だ」
彼だけを魔獣の跋扈する危険な地に向かわせるのは心配で、本当は一緒に行きたかった。
(エリオットさまのそばにいたい)
けれど、彼の言うとおり自分にも果たすべき務めがある。それを自覚したハンナは、力強くうなずいてみせた。
「――はい、お任せください」
数刻のうちに、彼はすべての準備を整え終えた。
「アレクス。お前には騎馬隊の指揮を頼む。私は特に魔力の強い者を連れて、ひと足先に向かうぞ」
エリオットは空間移動魔法が使える。精鋭たちを連れて、先にカヤックの街に入ると決めたようだ。
「クロ」
中空を見つめてエリオットがつぶやくと、音もなくハーディーラが現れた。
その瞬間、辺りが異質な空気に包まれる。冴え冴えとした静寂、闇の気配。
濃灰色の煙がエリオットを覆い、異界への扉が開いた。と同時に、ビュウと強い風が吹く。
「では、ハンナ。行ってくる」
「エリオットさま! どうかご無事で」
ハンナの目の前で、彼の笑顔は霧のように消えていった。