呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 それから一日、二日と時が過ぎ、ついに一週間。エリオットはまだ帰ってこない。

 幸い、王都は平穏だ。エリオットが王都の守備を手厚く残してくれたおかげで、フューリー率いる反乱軍も手出しできないでいるのだろう。

(けれど、裏を返せば……魔獣対応で王都が疲弊するのを待っているとも言えるわよね)

 一刻も早く魔獣問題を片づけ、反乱軍が付け入る隙を塞がなければならない。エリオットもそれは重々承知しているはず。

 一日の執務を終えたハンナは窓辺に佇み、白銀に輝く三日月を見あげた。

 数か月前までは、エリオットと幸せに過ごしていたはずの時間。

 自分の半身を喪失してしまったような心許なさがつきまとう。自分の根が揺らいでいるのを実感し、ハンナはパンと軽く頬を叩いた。

(エリオットさまが不在なぶん、私がしっかりしないと!)

 次の瞬間、静かな部屋にコンコンというノックの音が響いた。

「王妃さま。お休み前のハーブティーをお持ちしました」

 ナーヤが丸い盆に、ティーポットとカップをのせて運んできてくれる。

「ありがとう。ちょうど喉が渇いたなと思っていたの」

 ハンナは丸いティーテーブルの脇に置かれた椅子に腰をおろした。ナーヤの用意してくれたお茶の優しい香りに、心がほぐれていく。
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