呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 コロコロと、何度か寝返りを打つ。どうしたって、頭に浮かんでくるのはエリオットのことばかり。

(エリオットさまは空間移動が自在にできるし、時々は報告に戻ってきてくれると期待していたのだけど……)

 それすらできないほどに逼迫した状況、ということだろうか。

 魔獣に蹂躙された街の絵がハンナの脳裏をかすめる。エリオットは無事だろうか?

 胸がグッと締めつけられるように痛む。なにもできずに待つだけというのは、こんなにも苦しいのか。

「……エリオットさま」

 思わず彼を呼んでしまったが、返事をもらえない事実がハンナを余計にさいなんだ。

 この部屋も、ベッドも、ひとりきりで使うには広すぎる。

 エリオットの大きな手が、唇が、ぬくもりが恋しくて……ハンナは切ないため息を落とす。

(私、いつからこんなにも彼のことを?)

 始まりは、エリオットが与えてくれるあふれんばかりの愛に報いたいという思いだった。きっと自分より、彼の気持ちのほうが重かった。おそらく、エリオットは今も、そしてこれからもそうだと信じているだろう。

 だけど……ハンナの愛も驚くべきスピードで成長している。もはやエリオットに負けないくらい、大きく、重く。

「エリオットさまが帰ってきたら、お伝えしてみましょうか」

 エリオットの思いと同じ。いや、ひょっとしたらそれ以上の強さで、ハンナも彼を愛しているのだと。
< 144 / 187 >

この作品をシェア

pagetop