呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
(一日でも早く、エリオットさまが回復しますように)

 ハンナは強く強く、願った。

 エリオットに同行していたアレクスの話によると、苦労はしたがカヤックの街におりてきた魔獣たちの討伐は無事に完了したそうだ。

 ハンナは彼からの報告を思い出す。

『原因はやはり……我々、人間側にありました。グレイブ山の林業を取り仕切る商会が、国で定めている基準をこえた無茶な伐採をしていたようで……そのせいで魔獣たちの餌となる植物の不足が起きていたようです』

(商会の悪だくみ……本当にそれだけかしら?)

 近衛軍が調査した範囲では、裏で糸を引く人間の存在は確認されなかったようだが……。

『魔獣襲来と反乱は繋がっている可能性がある』

 あのエリオットの言葉は真実を言い当てているように、ハンナには思えるのだ。

(エリオットさまの兄、イルヴァン公が故意に魔獣の餌を不足させたのだとしたら?)

 魔獣被害は本当にこれで終わるだろうか? 

(彼は王都が弱体化するのを待っている。もしそうなら――)

 嫌な予感ほど当たるもの。王宮に凶報が届いたのはその日の夕刻のことだった。

「大変ですっ! リベットの森が火事になり、追われた魔獣たちがこの王都エルガに――」

 国王の執務室。

 エリオットはまだ熱がさがりきっていない身体に鞭を打ち、対策会議の場に出てきている。
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