呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「鎮火作業はもう進めております。ですが、群れで動き出した魔獣はそう簡単には止まらず……」
「自然な火事ではないな。おそらく、シーレンの反乱軍が故意に起こしたものだろう。リベットの森は王都とは目と鼻の先。魔獣が王都になだれ込み混乱している隙をついて……」

 フューリーは反乱軍を率いて、王都に攻め込む算段だろう。

「敵ながら、なかなかに考えたな。よく練られた、いい作戦だ」

 言って、エリオットは苦笑する。

 先の討伐で、エリオットをはじめとした優秀な魔法使いたちは魔力を使い果たし疲弊している。すぐにリベットの森に向かうのは不可能だ。となると、王宮は人海戦術で多数の兵を動かすしかなくなる。

(でも、それをすると王宮の警備は手薄になって、反乱軍に制圧されてしまう)

 かといって、リベットの森を放置すれば魔獣たちは王都エルガをめちゃくちゃにするだろう。

 王都が壊滅的な被害を受ければ、政治も経済も混乱し、エリオットの求心力はたちまち低下する。

 反乱軍に寝返る者もふえ、エリオットの治世は確実に崩壊に向かう。

 不吉な想像ばかりが浮かんできて、ハンナは身震いをした。

(そんな未来、絶対にダメよ。阻止しなくては!)

「魔獣と反乱軍、両方を速やかに鎮圧するぞ」

 低い声でエリオットが告げる。だが、アレクスは悲痛な表情で訴える。
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