呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「さて、朝食にしようか。私が食べさせてあげるからハンナはベッドにもたれたままでいい」
エリオットはベッドサイドのテーブルに置いたトレーに手をかける。国王に食事を食べさせてもらう臣下など、ありえないだろう。ハンナは頭を抱えたくなった。
「あの、エリオットさま。朝食を運ぶのは侍女の仕事でしょう? 彼女たちの仕事をむやみやたらと奪っては……」
「大丈夫。私に〝この甘美な時間を譲る〟ことが侍女たちの仕事だと説明し、納得してもらっている」
「か、甘美な時間とは?」
エリオットがグッと顔を近づけて、大きな両手でハンナの頬を包む。
「私の手から君が食事をする。それで、おいしいと笑ってもらう。世界で一番、甘美で尊い時間だよ」
エリオットの顔が至って真剣なので、反応に困ってしまう。
十五歳当時も、彼はハンナによく懐いてくれていた。でもそれは孤独だった彼が初めて関わりを持ったのが自分だったから……というだけの理由で、言ってしまえば雛鳥の刷り込みと同じだ。
成長すれば自然と薄れて消滅するもの。そう思っていたのに――。
(刷り込みが……解けるどころか悪化している?)
彼は素晴らしく立派な大人の男性になった。だからこそ、不遇王子の立場から国王にまでのぼりつめることができたのだろう。
この王宮の豪華絢爛ぶりを見るかぎり、彼の治世はきっと順調なのだろう。今は支えてくれる臣下だって、たくさんいるはず。
エリオットはベッドサイドのテーブルに置いたトレーに手をかける。国王に食事を食べさせてもらう臣下など、ありえないだろう。ハンナは頭を抱えたくなった。
「あの、エリオットさま。朝食を運ぶのは侍女の仕事でしょう? 彼女たちの仕事をむやみやたらと奪っては……」
「大丈夫。私に〝この甘美な時間を譲る〟ことが侍女たちの仕事だと説明し、納得してもらっている」
「か、甘美な時間とは?」
エリオットがグッと顔を近づけて、大きな両手でハンナの頬を包む。
「私の手から君が食事をする。それで、おいしいと笑ってもらう。世界で一番、甘美で尊い時間だよ」
エリオットの顔が至って真剣なので、反応に困ってしまう。
十五歳当時も、彼はハンナによく懐いてくれていた。でもそれは孤独だった彼が初めて関わりを持ったのが自分だったから……というだけの理由で、言ってしまえば雛鳥の刷り込みと同じだ。
成長すれば自然と薄れて消滅するもの。そう思っていたのに――。
(刷り込みが……解けるどころか悪化している?)
彼は素晴らしく立派な大人の男性になった。だからこそ、不遇王子の立場から国王にまでのぼりつめることができたのだろう。
この王宮の豪華絢爛ぶりを見るかぎり、彼の治世はきっと順調なのだろう。今は支えてくれる臣下だって、たくさんいるはず。