呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 呼んだハンナ自身が一番びっくりしている。

「やっぱりと思われるのは癪だからな」

 フンと彼は鼻を鳴らす。つまり、ハンナが来ないだろうと思っていたから彼は来たということらしい。どうしようもない天邪鬼だ。

「なにか用か?」
「ハーディーラさまに聞きたいことがあるのです。あなたの魔法のことです」
「俺さまにできないことはないぞ」

 腕を組み、彼はグッと胸を張る。が、ハンナの疑念の眼差しと「……」という台詞を受けて、小さく肩をすくめた。

「と、かっこよく言いたいところだが、無理なものも多少はある。たとえば魔法は不可逆なもの。一度かけてしまったものを取り消すのは非常に困難だ」 
「大丈夫です。取り消しを望むことはありません」
「あと、いつも言っているように明るく楽しげな魔法は苦手分野だな」

 いたずらが見つかった子どものような顔で、彼は口をへの字にする。

「それも心配いりません。ちょっと後ろ暗い、人には言いたくない感じの……ハーディーラさまの得意分野かと存じます」
「ほぅ」

 ニヤリと彼は片頬を緩める。

 ハンナの頼みたいことを、薄々察しているのかもしれない。なにせ六大精霊なのだ。人の心のうちを読むくらい、朝飯前だろう。

 その証拠に、得意分野のどういう魔法か?と、彼は聞いてこなかった。

「ハーディーラさまが、私の頼みを聞き入れてくれる可能性はどのくらいありますか?」
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