呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「……アレクスに、なにがあっても君を守るよう頼んだ。だが、絶対に無茶はするな」

 近衛軍の総指揮官であるアレクスには王都を守るためにここに残ってほしいのだが、エリオットが彼を連れていくのを絶対条件にしたため、ハンナは受け入れざるを得なかった。

「はい、わかっております」
「約束だぞ」

(約束……)

 その言葉にハンナの心がツキンと鋭く痛む。

 いつだってまっすぐにハンナを見つめるその瞳が、甘く優しく細められる。

「今日のハンナは、一段と綺麗だな。女神そのものだ」

 優しい声はハンナの胸に染み入るように響いた。

「私、昔はなんの取り柄もないのがコンプレックスだったんです」

 ぽつりと、ハンナはこぼした。

 ごくごく平凡な顔立ちで、背が小さいくせに胸が大きめなのもアンバランス。地味なブルネットの髪色も好きではなかった。語学は得意で学力はまぁまぁ高かったものの、男性ならともかく貴族令嬢にとって賢さは大きな武器にはならない。

「だから、なにかを望んだりせず与えられたもので満足しよう。そんなふうに考えて生きていました」
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