呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
(あぁ、エリオットさまはとっくに覚悟を決めていたのね)

 瞳の奥が熱くなったが、どうにか辛抱した。

 悲しい涙は見せられない。自分がエリオットの秘密を知っていることは絶対に悟られてはいけないから。

 ハンナはクスリとして、言い返す。

「急に死なれては困ります。魔獣は私がなんとかしますが、王都はエリオットさまに守っていただかないと! 反乱軍の来る二日後までに、しっかり回復してくださいね」
「そうだな」

 それから、ハンナは少しだけ考える。

 最期に彼に伝えるべき言葉はなにかを――。

「エリオットさまこそ、どうか忘れなないでください。あなたを愛し、愛されて……ハンナ・カーミレスは世界で一番、幸せな女です」

(私はいつも、エリオットさまとの約束守ることができないわね)

 でも、自分の決断は決して間違ってはいないはず。

 彼に伝えるべき言葉はすべて伝えた。もう未練はない。

 ハンナは部屋を出て、そっと扉を閉める。

 「ありがとう。そして、さようなら」
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