呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 自分がいつの間にか植物魔法を獲得していることに気がついたのは、エリーと名付けたあの虹色の小鳥に出会った頃だ。

 ナーヤのそれと比べても、ハンナの植物魔法はまぁまぁ優秀といえるだろう。

(ここまでは想定どおり。でも、難しいのはこの先よね)

 何十年とかけて成長してきた樹木たちを、短時間でもとの状態に。そこまで高度な植物魔法を扱える者はそう多くはないし、できたとしても多大な魔力を消耗する。

 けれど、この樹木たちがつける実こそが魔獣たちの大好物。

(私にできる? ううん、やるしかないわ)

 この作戦が成功しなければ、ここに連れてきたナーヤたちや兵士の命が真っ先に危険にさらされる。

 魔獣は夜の間はあまり活発に動かない。彼らの邪魔が入りにくい夜明け前までに森を復活させ、安全な場所に退避する。

 それがハンナの立てた作戦だ。

(急がないと!)

 ハンナの指先から放たれた光を受け、ボロボロになった木々がザアァと揺らめいた。すくすくと、夜空に向かって枝が伸びていく。

「す、すごいです。王妃さま!」
「うん、どうにか成功できたみたい」

 だが、手放しで喜ぶことはできない。ハンナは肩で息をし、うっすらと顔をしかめた。

(想像以上に消耗する。森全体を復活させるなんて、とても不可能かも……)

 それでも、ハンナは死力を尽くして必死に木々を生育させた。

 短時間で頬がこけ、膝はガクガクと震えた。気力も体力も限界に近い。
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