呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「お、王妃さま。もう休んでください。そうだ、陛下に応援を!」

 ハンナを心配して駆け出そうとするナーヤを慌てて止める。

「ダメ。陛下には……なにも伝えないで。心配をかけたくないの」
「で、でも……」
「大丈夫。リベットの森は私が取り戻すわ」

(エリオットさまが守ってきたオスワルト、この土地と民を私も守りたい!)

 ハンナは最後の気力を振り絞って、顔をあげる。すると、正面から虹色に輝くなにかがやってきた。

「え?」

 虹色の羽を持つ小鳥、エリーがふうわりとハンナの頭上を飛ぶ。

「エリーよね? どうしてここに?」
『私はあなたのお友達だもの。ふふ、手伝ってあげるわ』

 頭のなかに直接響いてくるような、不思議な声音だった。

「手伝うって、どういうこと?」
『美しい森を取り戻したいのでしょう? そういう、明るくて楽しげな魔法は私の得意分野よ。ほらっ』

 エリーがハンナの白い甲にキスをする。すると、すさまじいエネルギーがハンナの手に宿った。

「え、これはいったい?」

 とても不思議な体験だった。

 ハンナが頭のなかに思い描く生気に満ちた森の絵がそのまま、自身の身体を通って具現化していくような……ハッと気がついたときには、数百の木々がグングンと伸び、見る見るうちに緑の葉が覆い茂っていく。

「ど、どういうことでしょうか? あっという間に森が蘇っていきますよ!」

 隣のナーヤがはしゃいだ声をあげる。
< 166 / 187 >

この作品をシェア

pagetop