呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 ハンナは唖然として、エリーを見つめる。

「あ、あなたは誰? ただの小鳥じゃないでしょう?」

 エリーの正体を問い詰めようとしたけれど、彼女はクスクスとおかしそうに笑ってまたどこかへ飛んでいってしまう。

『大丈夫、またすぐに会えるわ』

 そんな言葉を残して――。

「待って!」

 エリーのことも気になるが、今はまず魔獣の問題だ。

 彼女のおかげで森を復活させることは叶ったが、これがゴールではない。

 元通りになった森に魔獣を呼び戻す。そこまでがハンナに課せられた任務だ。

「魔獣が活発になる前に、危険のない場所まで避難しないと! ナーヤ、みんなにも声をかけてくれる?」
「はい、王妃さま!」

 東の空がうっすらと白みはじめた頃、復活した森に魔獣たちを誘導する役目を担っていたアレクスが息を切らせてハンナのもとに戻ってきた。

「よい知らせと、悪い知らせがあります」
「……よい知らせから聞きたいわ」

「はっ。魔獣たちが街を離れ、リベットの森に帰りました。王妃さまの作戦、見事に成功をおさめました」
「ほ、本当に?」
「はい。負傷者も想定よりずっと少なく済んでおります」

 よかったと言いたいところだけど、そうはいかない。もうひとつの報告を、まだ聞いていないからだ。

「それで、悪い知らせのほうは?」

 アレクスの顔が苦悶にゆがむ。

「反乱軍が王都に侵攻しております」
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