呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「――えっ? 最短でも二日はかかるという話だったのに。どうして?」
「シーレン地方以外にも拠点を作っていて、そちらから王都に攻め入った模様です」

 背中を冷たい汗が伝う。

「そんな……現在の状況は?」
「残っていた近衛軍が王都の西門辺りで、反乱軍を食い止めるべく戦っています」

 嫌な予感を覚えながら、それが外れていることを期待してハンナは問う。

「総指揮官のあなたはここにいる。では、近衛軍の指揮は誰が?」
「――陛下が」

 嫌な予感は的中してしまった。ハンナは思わず「あぁ」と嘆きの声をあげる。

(あんな身体で戦闘を指揮するなんて無茶だわ)

 アレクスは呆れと誇らしさの入り交じる顔で続けた。

「みんなで止めたそうなのですが、陛下は『愛する妻が戦っているのに、自分だけ伏せっているわけにはいかない』と聞かなかったようです」

(――エリオットさま!)

「王妃さまに陛下からの伝言です」

 ――君の帰ってくる場所は必ず守る。だから、早く私のもとに戻っておいで。

 目頭が熱くなって、彼への思いがあふれ出す。どうしようもなく、エリオットの笑顔に会いたかった。

「私は動ける兵たちを連れてすぐに戻り、陛下に加勢します」
「頼んだわ。気をつけてね」

 アレクスは素早く一礼すると、すぐに駆け出していった。

(私も、あともうひとつ。王妃として大事な仕事をやり遂げなくては)

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