呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 なにもかもを知っているような、含みのある眼差し。

 今、聞かなくてはならない。ハンナの直感がそう告げる。

「ハーディーラさまもなにか隠しているのですね? 似た者同士とはどういう意味でしょう」
「エリオットに口止めされてるからなぁ」
「私はもうすぐ死ぬ予定です。思えば、ハーディーラさまとも長い付き合いになりましたね。冥土の土産くらい、ねだってもいいですよね?」

 彼は答えない。でも、多分あともうひと押しだ。

「そうそう。ちんちくりんというあだ名、実は傷ついていたのですよ。背が低いのは自分でも気にしているのに」

 ハンナの攻撃に、彼はうっと言葉を詰まらせる。

「ハンナは、ある意味、エリオットよりいい性格をしてる」

 彼は初めてハンナの名を呼び、おおげさに肩をすくめてみせた。

「でもまぁ、そうだな。今宵はいい夜だから、俺さまの気分は悪くないんだ」

 夜空を抱き締めるように両手を広げて、彼はニヤリと笑った。

 そして、ハンナの知らなかった真実を語りはじめる。

(私の眠りが本当は百年だった……? エリオットさまの寿命と引き換えに短縮されて?)

 ハンナはしばしの間、言葉を失った。

「つまり、あいつがもうすぐ死ぬのはあいつ自身が望んだことだ。お前が助けてやっても、エリオットは喜ばない」
「あぁ……」

 ハンナは両手で顔を覆い、天を仰いだ。
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