呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 無償の愛。

 この言葉はエリオットのために存在しているのかもしれない。

『私の、君への愛より重いということは、絶対にない』

 自信満々だった彼の発言はたしかに真実だった。

「……本当ですね。エリオットさまにはかなわない」

 彼の様々な顔が、言葉が、ハンナの脳裏を駆け巡る。

『結婚しよう、ハンナ。君が〝愛〟を教えてくれたあの日から、私の命は君のものになった。君を愛するためだけに生きると決めたんだ』
『心配しないで。この身も心も、すべてハンナのものだから。過去も、未来も、来世も、すべて君に捧げる。誓うよ』

 あの言葉も、あの言葉も。

 単なる男女の睦言や、上辺の口説き文句ではなかったのだ。

(すべて……本気の言葉、だったのですね)

 ハンナが目覚めてからのエリオットの命は、文字どおりにハンナを愛するためだけにあった。

 彼のすべてをハンナに捧げようとしていたのだ。

(何度も何度も愛をささやいて……まるで生き急ぐみたいだと感じたときもあった。でも、まさかこんな真実が隠されていたなんて!)

 彼の愛に応えたい。そう思ったのは事実。

 けれど、自分は彼の愛の深さを正しく理解してはいなかった。ここまでの重さで、強さで、愛していてくれたとは……。

 ルビーの瞳からこぼれ落ちるダイヤモンドが、闇のなかでキラキラと輝く。

 ハーディーラはそれを、どこかまぶしそうに眺めていた。

「ハーディーラさま」
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