呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 ハンナは彼を見つめ、それから深々と頭をさげる。

「教えてくださってありがとうございます。これ以上ない、冥土の土産になりました」

 これを知らないまま人生を終えずに済んでよかった。

 愛する人にこんなにも愛されていたと知り、もう思い残すことはなにもない。

 エリオットに告げたとおり、ハンナは世界で一番幸せな女だ。

 ハーディーラは後頭部の髪をクシャクシャとしながら、弱ったように眉尻をさげた。

「冥土の土産ではなく、これからを生きる糧にしたらどうだ? さっきも言ったが、お前の描く結末をエリオットは望んでいないと思うぞ」

 彼の主張も理解はできる。ハンナの死を知ったエリオットはどれだけ怒り、そして傷つくだろうか。だが――。

「エリオットさまは、このオスワルト王国に必要な方です。私はおこぼれでその座についただけの王妃ですが、それでも自分の責務は果たしたいと思っています」

 ハンナは強い眼差しで、未来を見据える。

「この国の明日のために、エリオットさまを助けてください」

 ハーディーラは苦笑して、軽く目を伏せた。

「お前は……エリオットを買いかぶりすぎだ。あいつがまともな王さまなんかやっているのは、ここがお前の暮らす場所だからだろう? お前がいなくなれば、この国にも、世界にも……エリオットは一瞬で興味をなくす。どうしようもないクズ王になるのが、目に浮かぶようだがな」
「ならば」
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